カテゴリ:手袋妄想劇場( 2 )

「ワインレッド」

「美奈子先輩、お元気で。無理してはいけませんよ。」

ベトナムの奥地の無医村に赴任するという美奈子に良一は何度も何度も同じことを言った。

「見送りはいらないから」と言われたが、家まで車で迎えにいって一緒に成田空港まで来たのだ。

外は雪でも振りそうな、二月の朝だった。

第一ターミナルは旅に出る高揚した観光客で賑わっていた。

航空カウンターでチェックインして荷物を預けると、出発まではまだ大分時間はある。

そーっと出発したいからと、見送りは他にいない。

「良一君、しっかり勉強して、良い医者になってね」

と美奈子はコーヒーを呑みながら子供をさとすように言った。

「僕も研修が終わったら美奈子先輩のところに行こうかな」

「だめだめ、しばらく大学に残って、教授にしっかりしこんでもらいなさい」

「あっ、そうだ、この手袋、向こうでは必要ないから、どこかで処分しておいて」

柔らかなワインレッドの手袋を手のひらで丁寧に延ばしながら、美奈子は良一に渡した。

良一は手袋を手にしたとき、美奈子のぬくもりが自分の手に流れ込んだような気がした。



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「どうして手袋を僕に渡したのだろうか、処分するのなら自分ですれば良いのに」

良一は車にもどるとポケットに入れてあった美奈子の手袋を出してみた。

その手袋を見つめて、心が動揺した。

美奈子のあのきゃしゃな手がたくさんのベトナムの人々を治療し、どんなにみんなが喜ぶだろうと一生懸命自分に言い聞かせていることに気づいたからだった。

車のエンジンをかけると、ヒーターから暖かい空気が流れこんできた

帰ってくるまで、僕が大切に持っているからねと心に誓いながら良一は手袋を握りしめた。



(文中写真は、Alta Classe)

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「手袋妄想劇場」その2です。
読書家で幅広い見識をお持ち、かつチャーミングなこの方が作ってくださいました。 
ありがとうございました♥

よろしければ、皆さんの手袋ストーリーをお聞かせください。
なんか、楽しい~~^^

Alta Classe

〒106-0032 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ ウエストウォーク4F

tel : 03.5980.8470 / fax : 03.5980.8490 mail : altaclasse-tokyo@vs.miinet.jp
http://www.roppongihills.com/shops_restaurants/shops/accessory/102330202.html





by uransuzu | 2015-09-19 20:57 | 手袋妄想劇場

仕事する女性の手袋

仕事をするときは、男性も女性も関係ない。
甘えられない、甘えたくないタイプだ。
ただ、目の前の仕事をどうクリアーしていくか、それだけを考えている。

そして考えこむとき、私は無意識に顎に手をあてているらしい。


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洋服は、いいものを身につけるようにはしている、それは自分が戦うための鎧だと思っているから。
余分なアクセサリーは不要だ。

ただ、品質のいい手袋をぴっちりとはめる。
裾の部分にエナメル素材、この艶っぽい輝きが好き。
誰にも気づかれない、私の小さなこだわり。

今夜も、ある仕事のことを考えながら、会社を出た。
そのとき、突然、後ろから追いついてきた誰かに、腕をつかまれた。
「あんまり、深刻に考えない方がいいですよ~。」
そして、
「その手袋、いいですね!」

手袋を褒められたのは、初めて・・・


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彼は、昨年入社したばかりの新人。
いつも、おちゃらけた雰囲気で、私に叱られることも多い。

彼の手には、深いネイビーの手袋が、やはりぴっちりと、はめられていた。
手袋が、「僕は、ちゃらいだけの男の子じゃないよ。」と物語っているようだった。

私はフゥッと気持ちが緩むのを感じた。
彼の前では、気張らなくてもいいのだ、彼はすべてを理解して、受け入れてくれる人なのだ。

「もう、バカ。びっくりするじゃないの。」
言いながら、私は、顎から手を下していた。


Alta Classe

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*リアル私をご存知の方は、もちろん、おわかりでしょうが、
モデルは私では決してありません(笑)
夫のいない一人夜に、ちょっと妄想の世界で遊んでみました~。

もし、皆さんに、手袋にまつわる素敵なお話しがあったら、どうぞ教えてくださいね~♪
妄想話も大歓迎です。

















by uransuzu | 2015-09-03 21:17 | 手袋妄想劇場 | Comments(24)